コラム

運動不足によるリスクと始めやすい運動不足の解消法

現代の便利な生活は、私たちの身体活動量を大きく減らす要因となっています。エレベーターや自動車の利用、デスクワーク中心の仕事など、日常の中で体を動かす機会が少なくなる一方で、ストレスを感じやすくなり、健康リスクも高まる傾向にあります。

 運動不足が続くと、生活習慣病や心身の不調につながるだけでなく、将来的な介護リスクを高める可能性もあります。こうした影響を防ぐには、日々の生活の中に無理なく運動を取り入れ、習慣化していくことが大切です。

この記事では、運動不足がもたらすリスクと影響を詳しく解説するとともに、ウォーキング・ストレッチ・筋トレといった簡単に始められる運動を紹介します。


運動不足によるリスクと影響


現代の便利な社会環境は、私たちの身体活動量を大きく減少させています。移動手段の自動化や長時間のデスクワーク、デジタル機器の普及によって、日常的に体を動かす機会が少なくなりがちです。こうした運動不足は、心身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。

 運動不足によるリスクと心身への影響について詳しく見ていきましょう。

●生活習慣病のリスクが高まる

運動不足の最大の問題は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れやすくなる点にあります。現代人の食生活は高カロリー・高脂肪傾向にある一方で、日常的な消費エネルギーが減っているため、エネルギーの過剰が続くと体脂肪が蓄積され、肥満につながります。

特に注意が必要なのが「内臓脂肪型肥満」です。糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の発症に深く関係しています。さらにこれらの症状が重なることで、いわゆるメタボリックシンドロームと呼ばれる状態に進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患を引き起こす可能性が高まります。

●ロコモティブシンドロームのリスクが高まる

身体を動かす機会が少ないと、筋肉や骨、関節などの運動器官が次第に衰え、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)のリスクが高まります。体重の増加は膝や腰への負担を強め、変形性膝関節症や腰椎疾患を誘発する要因です。

また、加齢に伴う筋力の低下やバランス能力の減退とあいまって、転倒・骨折のリスクも上昇します。一度骨折をすると日常生活の自立性が損なわれ、介護が必要な状態に陥るケースも少なくありません。こうした運動機能の低下を放置すると、生活の質(QOL)が著しく低下するおそれがあります。

●肩こりが起こりやすくなる

肩こりは、現代人にとって最も身近な身体の不調のひとつです。その原因として、「長時間同じ姿勢での作業」「眼精疲労」「運動不足」「ストレス」が挙げられます。特に、パソコンやスマートフォンの使用が増える現代では、首や肩の筋肉が常に緊張し、血流が悪化しやすくなっています。

運動不足によって筋肉量や柔軟性が低下すると、筋肉のコリが慢性化しやすくなり、症状の悪化につながります。さらに、ストレスによって交感神経が優位になると血流がさらに悪くなり、肩や首の痛みを強める要因となります。

●メンタル不調につながりやすくなる

運動不足は、身体だけでなく心の健康にも大きな影響を与えます。日常的に体を動かすことは、ストレスの解消や気分転換に役立ち、精神の安定を保つためにも重要です。逆に、運動しない生活が続くと、ストレスが蓄積されやすく、気分の落ち込みや不安感につながる可能性があります。

また、運動不足は脳の活性化を妨げ、集中力の低下や思考の鈍化を引き起こすだけでなく、睡眠の質を悪化させます。


始めやすい運動不足の解消法


運動不足を解消するためには、無理なく取り組めて、日常生活に取り入れやすい方法を選ぶことがポイントです。

ここでは、初心者でも始めやすい運動として、ウォーキング・ストレッチ・筋トレの3つを紹介します。

●ウォーキングに挑戦する

運動を始めたいけれど、何から始めていいか分からない方におすすめなのがウォーキングです。特別な道具や施設を必要とせず、いつでもどこでも自分のペースで取り組めるため、これまで運動習慣がなかった方や体力に自信がない方でも安心して始められます。

まずは日常生活の中で身体を動かす習慣を少しずつ増やし、そこから1日+10分のウォーキングを目安に取り入れてみましょう。有酸素運動の一つであるウォーキングには、心肺機能の強化、血圧や血糖値のコントロール、ストレスの軽減、脂肪燃焼など、さまざまな健康効果が期待できます。

ウォーキングを行う際のポイントは下記のとおりです。

  • 頭は正しい姿勢を意識してまっすぐに保ち、あごを軽く引く
  • 胸を開くようにして背筋をすっと伸ばす
  • ひじは約90度に曲げて、腕を大きく前後に振る。
  • 歩くときは足首を直角に曲げ、かかとから着地するよう意識する
  • 後ろの足はひざをしっかり伸ばし、つま先で地面を蹴るように歩く

これらのポイントを意識することで、姿勢が整い、より効果的かつ安全に運動できます。

●ストレッチをする

下記のようなストレッチで筋肉の柔軟性を高めたり、血流を促したりすることも大切です。

【首のストレッチ】

  1. 安定した椅子などに腰かけ、背筋をまっすぐ伸ばします。あごを軽く引き、顔を斜め45度ほど下に向けましょう。
  2. 右手を頭の上から回し、左耳の少し上あたりに手のひらを置きます。しっかりと手のひらで全体を添えるようにしましょう。
  3. 右手を添えながら、首をゆっくりと右側へ傾けます。首の左後ろがじんわり伸びているのを感じながら、20〜30秒そのままキープします。
  4. 反対側も同じ手順で行うと、首筋の緊張が和らぎやすくなります。

 

【背中・肩甲骨のストレッチ】

  1. 足を軽く開いて立ち、左腕をまっすぐ前に伸ばします
  2. 続いて右手で左腕の前腕をつかみ、右方向へ引き寄せながら上体を右側にひねり、そのまま10秒キープしましょう
  3. 左右交互に繰り返すことで、背中や肩甲骨周辺のこわばりがほぐれやすくなります

 

●簡単な筋トレを取り入れる

運動不足の解消や基礎体力の維持に効果的なのが、下半身を中心に鍛えるスクワットです。ただし、間違ったフォームで行うと、腰や膝に負担がかかってしまうため、正しい方法を意識することが大切です。

以下に、基本的なスクワットの手順と注意点を紹介します。

  1. 両腕を胸の前で軽く組み、背筋は真っ直ぐに、つま先は軽く外に向け、足を肩幅に開いて立つ
  2. 背筋は真っ直ぐのまま、ゆっくり3秒かけて腰を落とし、膝がつま先より前に出ないように注意しながら約45度までしゃがむ
  3. その姿勢を5秒間キープ
  4. 背筋は真っ直ぐのまま、3秒かけてゆっくりと立ち上がり、元の姿勢に戻る

この一連の動きを1回とし、10回を1セット、1日2〜3セットを目安に無理なく続けるのが理想です。

取り組む際のポイントは以下のとおりです。

  • 背中が反りすぎたり丸まったりしないよう、常にまっすぐを意識する
  • 最初から深くしゃがもうとせず、徐々に筋力に合わせて可動域を広げる
  • 膝や腰に違和感がある場合は、すぐに中止する

正しいフォームを守ることで、安全に効果的なトレーニングが可能になります。


運動を無理なく続けるコツ


毎日忙しい中で運動の時間を確保するのは簡単ではありませんが、日常の動作や生活習慣にちょっとした工夫を加えるだけでも、十分に身体を動かすことができます。ここでは、特別な準備をしなくてもできる運動の取り入れ方を紹介します。

●通勤中や職場で運動する

日々の通勤や仕事の合間も、意識次第で立派な運動の時間になります。たとえば次のような行動を習慣にすることで、無理なく活動量を増やすことが可能です。

  • 通勤手段を自転車にすることで、下半身を中心に筋力や持久力を高めることができます。心肺機能の向上にもつながります。
  • 電車通勤の場合は、目的地の1駅手前で降りて歩くと、ウォーキングの時間が自然に確保できます。
  • 駅や職場では、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う習慣をつけることで、脚力の維持・強化につながります。

いずれの動作も負担が少なく継続しやすいため、日々の運動習慣として取り入れやすいでしょう。

●暮らしに運動を取り入れる

家庭でも工夫次第で身体を動かす機会を増やすことができます。特別な器具や広いスペースがなくてもできる方法はたくさんあります。

  • 買い物に行く際は、なるべく徒歩を選ぶことで自然に歩数が増え、下半身の筋力維持や体力向上に役立ちます。
  •  窓ふきやお風呂掃除といった家事も、意識的に身体を使って取り組むことで立派な運動になります。全身を使う動作は、筋力だけでなく柔軟性の向上にもつながります。
  • テレビを見ている間に行う筋トレやストレッチも効果的です。スクワットや腹筋、肩回しなど、すき間時間を活用すれば無理なく続けられます。

継続することが健康づくりにおいて大切なため、自分に合った方法でコツコツと取り組んでいきましょう。


まとめ


運動不足は、生活習慣病やロコモティブシンドローム、肩こり、メンタル不調といった多くのリスクを引き起こす可能性があります。体だけでなく心の健康を守るためにも、日常生活の中で意識的に体を動かすことが欠かせません。
ウォーキングやストレッチ、簡単な筋トレなどは、特別な道具がなくても始められる身近な運動です。自分のペースで無理なく継続することが大切です。

運動を習慣化することで、健康の維持・増進につながるだけでなく、毎日の生活に前向きな変化をもたらしてくれます。まずは無理のない範囲で、できることから取り組んでみましょう。

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