コラム

グルタミンってなんだろう? |免疫と腸を守る“条件付き必須アミノ酸”

「グルタミン」と聞いて、すぐにその役割が思い浮かぶ人は少ないかもしれません。しかしこのアミノ酸、実は私たちの健康を支える“見えないヒーロー”なのです。


グルタミンは「条件付き必須アミノ酸」


グルタミンは、体内で合成できる「非必須アミノ酸」に分類されてきました。つまり、健康なときは特に食事から摂らなくても、他のアミノ酸や筋肉を使って、体内で必要な分が作られるのです。

ところが近年、「ある条件下では体内での合成が追いつかなくなる」ことが明らかになってきました。たとえば、発熱や感染症、手術、外傷、さらには過度の運動や無理なダイエットのとき。こうした体にストレスがかかる場面では、グルタミンの需要が一気に高まり、体は筋肉を分解してまでその不足を補おうとします。これが、筋肉の減少や回復力の低下を招く原因になるのです。

このような背景から、グルタミンは「条件付き必須アミノ酸」と呼ばれるようになっています。


腸と免疫に、グルタミンの力


グルタミンが活躍している場所は、腸。小腸は体内最大の免疫器官で、全身のリンパ球の6割以上が集まっています。グルタミンは、この腸の粘膜細胞やリンパ球の大切なエネルギー源となり、腸内環境と免疫力を同時に支える役割を果たしているのです。

グルタミンが不足すれば、腸のバリア機能が低下し、病原体の侵入リスクも高まります。逆に、グルタミンを十分にとっておけば、腸の状態が整い、風邪や感染症にかかりにくくなるというわけです。


毎日どれくらい摂ればいいの?


通常の食事から摂れるグルタミンは、1日に約5g程度といわれています。しかし、ストレスがかかっている状態では、20〜30gもの補充が必要だとされます。身体が健康の時は、体内のアミノ酸からグルタミンが合成されるため、このように差が出るのでしょう。

そこで重要なのが、日ごろから意識的にグルタミンを含む食品を摂ること。血中グルタミン濃度を一定に保つことで、腸のバリア機能を高め、安定させることができます。


グルタミンを含む身近な食材と調理法


グルタミンは熱に弱く、40℃以上で変性してしまうため、生または生に近い状態で摂るのが理想的です。以下のようなメニューがおすすめです:

  • 生魚(特にマグロ):刺身、たたき、漬け丼、カルパッチョなど。
  • 生肉(レア調理):牛肉のたたき、タリアータなど。
  • 生卵:ごはんを冷ましてからの卵かけごはん。マグロと合わせて「ユッケ風」にすると栄養満点。
  • 発芽大麦:グルタミンのほか、食物繊維から分解される酪酸が大腸のエネルギー供給源にも。ごはんに混ぜて炊いたり、おこしにすると◎。

最後に:グルタミンは「備え」の栄養


グルタミンは、普段は気づかないけれど、いざというときに真価を発揮するアミノ酸です。体調を崩しやすい季節や、忙しさで体が疲れていると感じるときこそ、グルタミンを意識的に取り入れることで、内側からの健康を守ることができます。

日々の食事で腸を整え、免疫を高める―それは未来の自分への、最高の投資かもしれません。

監修:松生恒夫

1995年東京生まれ。医学博士。松生クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2003年、東京都立川市に松生クリニックを開業。6万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸疾患治療の第一人者。便秘外来の専門医として地中海式食生活、漢方治療、音楽療法などを取り入れた診療で効果を上げている。著書に『子どもの便秘は今すぐなおせ』(主婦の友社)、『見た目は腸が決める』(光文社)、『「腸の老化」を止める食事術』(青春出版社)、『日本一の長寿県と世界一の長寿村の腸にいい食事」(PHP研究所)など多数。

■松生クリニックHP https://matsuikeclinic.com

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